• 担当:田中正巳先生 論文内容:代謝異常が血圧を上げる機序を腎臓・内分泌・代謝の観点から考察する

担当:田中正巳先生 論文内容:代謝異常が血圧を上げる機序を腎臓・内分泌・代謝の観点から考察する

2019年10月4日 田中正巳先生

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論文

Hypertension as a metabolic disorder and the novel role of the gut. Current Hypertension Reports (2019) 21: 63

概要

高血圧は肥満、2型糖尿病、脂質異常などの代謝異常をしばしば合併し、BMI増加に伴って高血圧の有病率は直線的に増加します。したがって、高血圧は代謝異常の一つととらえることができます。10月4日の論文抄読会では、私が執筆した「Hypertension as a metabolic disorder and the novel role of the gut. Current Hypertension Reports (2019) 21: 63」という総説を取り上げます。本抄読会では、まず日本人は世界で一番血圧を下げなければいけない民族であることを塩分と肥満の観点から解説した後で、塩分摂取が直接肥満を引き起こす現象である「salt-induced obesity」についてご紹介します。そして「代謝疾患としての高血圧」の発症機序を説明します。高塩分摂取時にはSGLT2発現が抑制されることによってナトリウム利尿が増えますが、糖尿病状態ではこの機序が減弱しており食塩感受性高血圧につながる可能性が指摘されています。その後、本論文のメインテーマである消化管の話題に移ります。GLP-1やグレリンなどの消化管ホルモンや、甘み・塩分などを知覚する味覚受容体も血圧の制御に関与しています。小腸の甘み受容体がSGLT1を介して塩分と糖の吸収を制御していることなどをご紹介します。また、Roux-en-Y gastric bypassでは高血糖も高血圧も改善しますが、その機序に胆汁酸とSGLT1が深く関わっているという話をします。最後に腸内細菌と高血圧の関連についてお話します。高血圧の影響を受けて腸内細菌の組成は変化しますが、その逆に腸内細菌が血圧を変化させる可能性についてお話します。そして腸内細菌の操作による高血圧治療の可能性について言及します。高血圧と代謝異常の間には、消化管ホルモン、腸管ナトリウム吸収、腸内細菌の異常といった消化管に関する共通の機序が存在することが想定されます。このことから、消化管は「代謝疾患としての高血圧」を治療するうえで非常に魅力的かつ重要なターゲットであると考えます。