バクスター包括腎代替療法展開医学

研究グループの名称

腹膜透析グループ(バクスター包括的腎代替療法展開医学講座)

研究室主任および研究室メンバー

鷲田 直輝 (国際医療福祉大学腎臓内科 主任教授):平成11年 広島大学医学部 卒

専門

腎臓内科、血液透析、腹膜透析

森本 耕吉 (特任助教):平成17年 慶應義塾大学医学部 卒

専門

腎臓内科、血液透析、腹膜透析

  • 内山 清貴(平成24年卒)
  • 山木 謙太郎(平成25年卒)

研究のメインテーマ

  1. 腹膜透析の様々な課題の克服と、質の高い腹膜透析医療の提供
  2. 腎代替療法の選択肢としての腹膜透析の普及、および包括的腎不全治療の実践

研究概要

腹膜透析は在宅で実施可能な腎代替療法であり、患者の生活の質の維持に貢献するだけでなく、医療費の抑制にもつながりうる治療法です。しかし、腹膜透析には感染性合併症や腹膜劣化といった解決されるべき課題があり、腹膜透析を安全に提供するためには様々な対策を講じる必要があります。加えてわが国では、腹膜透析の選択率に著しい地域格差が存在します。この格差は、すなわち末期腎不全患者の在宅医療の地域格差であり、恐らく医療者の教育や経験の偏りに起因するものと考えられます。腹膜透析グループは、腹膜透析の様々な課題の克服とより良い腹膜透析の提供につながる基礎研究や技術開発を行うとともに、在宅医療が必要な全ての末期腎不全患者に適切な医療を提供できるよう、腹膜透析を含む包括的腎不全治療の実践と普及に取り組んでいます。

活動内容

(1)基礎研究

当グループでは、基礎研究として「腹膜透析液の生体親和性を改善し腹膜劣化を抑制する小分子の探索とその作用機序の解明」、「細菌性腹膜炎の治療反応性改善と再発抑制をもたらす小分子の探索とその作用機序の解明」という、いずれも実臨床へのトランスレーションを見越した研究テーマに取り組んでいます。

(2)臨床研究

当院の腹膜透析患者数は50名以上であり、関連医療機関で当グループのメンバーが診療に携わっている患者数を加えると70名以上となり、都下では有数の規模となります。このような多数の患者を対象として、生活の質や運動耐容能といった個体レベルでの指標、あるいは耐糖能や炎症マーカーといった検査値レベルでの指標に注目し、複数の観察研究や介入研究を実施しています。また、臨床研究の一環として、腹膜透析医療の質向上につながる新たなデバイスの開発にも取り組んでいます。インターネット接続が可能なタブレット端末を活用した遠隔医療は、在宅医療としての腹膜透析との親和性が高く、企業と連携しハードウェア・ソフトウェアの両面からのアプローチによりシステムとしての確立を目指しています。また、最近では、腹膜透析患者においてしばしば大きな問題となる傍カテーテル感染に対する高い抗堪性を備えた新たな形状の腹膜透析カテーテルを開発し、上市しています。

(3)教育活動

教育活動は、大学病院の責務であるとともに、わが国における末期腎不全在宅医療の地域格差の是正に直結しうる重要なミッションです。当グループは、「慶應腹膜透析カンファレンス」「慶應腹膜透析研修プログラム(PD TRAP)」「慶應PDセミナー」という3つの企画を中心に、教育活動を展開しています。

「慶應腹膜透析カンファレンス」は、当院とその関連医療機関から医師・看護師やその他の医療スタッフが一堂に会し、各医療機関における腹膜透析をはじめとする腎代替療法への取り組み状況を共有するとともに、わが国の腹膜透析医療のトップランナーをお招きしてご講演をいただくもので、平成20年以降近年は年1回(毎年2月)開催しています。平成30年2月2日には第12回が開催され、産業医科大学の田村雅仁教授と埼玉医科大学の中元秀友教授にご講演をいただき、参加者70名(医師34名・看護師28名・栄養士1名・臨床工学技士1名・ソーシャルワーカー3名・その他3名、学内23名・学外47名)の盛会となりました。

「慶應腹膜透析研修プログラム(PD TRAP)」は、腹膜透析の経験が浅い全国の医療機関を対象とし、受講希望者が事前に申告した内容に沿ったオーダーメイドな内容を日帰りで受講できるもので、平成24年7月の開始以降随時開催し、27施設から49名の医師・看護師・臨床工学技士をはじめとする医療従事者にご参加いただき、好評となっています。

「慶應PDセミナー」は、腹膜透析に積極的に取り組んでいる全国の医療機関を対象とし、毎回10施設程度の医療機関から医師・看護師1名ずつをお招きし、各施設が抱える課題を持ち寄り共有・議論するもので、平成24年以降年1回(毎年7月)開催しています。これまでに北海道から沖縄までの全国各地からのべ37施設にご参加いただき、毎回非常に熱い議論が交わされています。

当グループの重要なミッションである教育活動に関するお問い合わせや参加のご希望は、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 森本耕吉(kohkichi.morimoto@keio.jp)までご遠慮なくお寄せ下さい。

業績

  1. Rho-kinase Inhibition Ameliorates Peritoneal Fibrosis and Angiogenesis in a Rat Model of Peritoneal Sclerosis
    Washida N, Wakino S, Tonozuka Y, Homma K, Tokuyama H, Hara Y, Hasegawa K, Minakuchi H, Fujimura K, Hosoya K, Hayashi K, Itoh H.
    Nephrol Dial Transplant. 2011 26 2770.
  2. Impact of Switching from Darbepoetin Alfa to Epoetin Beta Pegol on Iron Utilization and Blood Pressure in Peritoneal Dialysis Patients
    Washida N, Inoue S, Kasai T, Shinozuka K, Hosoya K, Morimoto K, Wakino S, Hayashi K, Itoh H.
    Ther Apher Dial. 2015 19 450.
  3. Impact of Peritoneal Dialysis Catheter Insertion by a Nephrologist: Results of a Questionnaire Survey of Patients and Nurses
    Washida N, Aikawa K, Inoue S, Kasai T, Shinozuka K, Morimoto K, Hosoya K, Hayashi K, Itoh H.
    Adv Perit Dial. 2015 31 59.
  4. Interventional Nephrology: Current Status and Clinical Impact in Japan
    Ikeda M, Terawaki H, Kanda E, Furuya M, Tanno Y, Nakao M, Maruyama Y, Maeda M, Higuchi C, Sakurada T, Kaneko T, Io H, Hashimoto K, Ueda A, Hirano K, Washida N, Yoshida H, Yoshikawa K, Taniyama Y, Harada K, Matsuo N, Okido I, Yokoo T.
    Clin Exp Nephrol. 2017 Aug 2. doi: 10.1007/s10157-017-1457-y.