• 担当:徳山博文先生
    論文内容:Ca拮抗薬ベラパミルの膵β細胞保護効果

担当:徳山博文先生
論文内容:Ca拮抗薬ベラパミルの膵β細胞保護効果

2018年10月5日 論文抄読会 徳山博文先生

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論文

Verapamil and beta cell function in adults with recent-onset type 1 diabetes.
Nat Med. 2018 Aug;24(8):1108-1112.

概要

1型糖尿病(DM)では、β細胞の大半を免疫系が破壊し、主要な治療法はインスリンの補充である。1型DMにおいて血糖コントロールにつとめても心血管イベント発症を抑えきれない。また、血糖を厳格にコントロールしようとし過ぎ、低血糖を引き起こしたり、インスリン使用量が増加すると肥満形成につながる。適正な血糖コントロール、合併症の減少のためにEndogeneousなインスリン分泌を保持すべくbeta 細胞の機能保持は極めて重要であり、そのため、インスリンの使用量を減らせる新規な治療法や補助療法が求められてきた。

本論文は、既存の降圧薬を1型DM治療に転用し、効果を発揮したというもの。同グループはこれまで、DMモデルマウスにおいて、Ca拮抗薬のVerapamilがタンパクの酸化還元作用に関わるTXNIP(thioredoxin-interacting protein)を抑制し、beta細胞を保護し、糖尿病を改善させることを基礎研究で明らかにしてきたが、これをヒトにおいて試した。TXNIPはDMにおけるhuman islet microarrayでglucose induced geneの中で最も顕著に上昇したものの中の一つでubiquitousに分布するもの。Beta cell内ではglucose regulated proapoptotic factor、つまりbeta cell glucose toxicityのptential mediator.として認識されている。TXNIPはDMにおいて著明に増加し、beta細胞アポトーシスを引き起こすことがわかっていた。L型Caチャネルが心臓、膵beta細胞に多く分布することが分かっており、本研究ではCa拮抗薬のVerapamilが使用された。これまで、ARBが新規糖尿病の発症を抑制することは多くの研究で報告されている。そもそもCa拮抗薬はbeta細胞におけるCa流入を抑制するため、むしろインスリン分泌に不利と考えられていた。実臨床で汎用しているCa拮抗薬のベラパミルが、1型糖尿病を初発した成人患者でのインスリン治療の効果をさらに高めることが本臨床研究で初めて明らかになった。

今回のJournal Clubでは、同研究室の臨床研究の根拠となった基礎研究結果、およびNature Medicineに発表された臨床研究について説明する。合わせて、電気生理学的観点からCa拮抗薬の分類についても述べる。