教授挨拶

JINNAITAIの目指すものとその魅力

医師としての、高いそして生涯続く「満足度」の実現

皆さん、医師を志望した動機はなんだったでしょうか?おそらく多くの方は、「体に起こった変調がなぜなのか知りたい、そして元のなんともない体にもどりたい」という患者さんに共通する望みを叶えてあげたいということではなかったでしょうか?その望みが叶ったときの患者さんのうれしそうな表情、感謝の気持ちが、医師としての「生きがい」「喜び」となると思います。医学・医療の急速な進歩により、極めて高い専門性が要求されるようになり、医師としての守備範囲はともすれば狭くなりがちです。勢い、得意な「病気」を診断治療することができても、それ以外のことになると「他の専門の先生に聞いてください」、と言うようになりがちです。そもそも、体のさまざまな変調を虚心坦懐、何なのか、と問うことすら、なおざりになりがちです。そのような態度では、自分の得意な「病気」になってくれた(?)患者さんしか満足させてあげられません。我々、腎臓内分泌代謝内科では、このきわめて困難な「全身を診る」内科医に挑戦し続けています。この医療姿勢は、医学の流れが変わり、医療技術・疾病構造が変わっても、皆さんが年をとって体力が衰えても、みなさんの生涯を通じて、医師としての「生きがい」「満足」を、もたらし続けることができると思います。

現代医療の中心課題、非感染性疾患(Non-Communicable Diseases; NCD)全般の理解と先制医療の実践

21世紀になり、肥満の増加にともない、糖尿病やメタボリックシンドロームが激増し、その重要性は、社会的にも広く認知され、医療施策の最も大切な課題となっています。現在、癌と生活習慣病である高血圧、糖尿病などにもとづく血管障害による脳、心臓、腎臓機能不全などが、2大疾患群を形成しています。腎臓疾患は、腎炎にとどまらず、慢性腎臓病(CKD)が心血管病のリスクとなることが明らかになり(心腎連関)大変注目されています。増加する認知症、寝たきり、感染症もこれらの病態に起因しています。日本医師会の横倉義武会長も、「健康長寿社会を目指して」の講演のなかで、医療費適正化を考慮すべき最重要疾患分野として、(現在多大の医療費が投入されている重要な疾病ととらえられる)糖尿病(医療費投下1.2兆円)、人工透析(1.4兆円)などをあげておられます。また、最近では、肥満、メタボリックシンドロームに高頻度に発症する癌の存在も脚光を浴びています。これらの疾患を、WHOは、非感染性疾患(NCD)として位置づけ、最重要医療課題としています。

我々、腎臓内分泌代謝内科は、まさにNCDの総合医療を目指しています。そうすることができる内科の範囲を一教室の中に含有しています。このような組み合わせの内科は全国的に見ても極めてユニークな存在です。肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、CKDそして腎不全・透析、さらに心疾患、脳血管障害の一次予防および肥満・メタボリックシンドローム関連の悪性腫瘍の早期発見など、広角の診療姿勢を涵養する教室です。

予防医療の重要性が叫ばれて、すでに久しいですが、このアプローチは、あくまでリスクの層別化に基づく、集団の医療です。現在、新しい医療として、先制医療(Pre-emptive medicine)が注目されています。これは、個々の人間に注目して、超早期に病気の萌芽を高精度に捉えて、積極的に介入することで、その後に起こるであろう病勢を操作する新医療です。我々の教室では、NCDの先制医療の開発と実践に取り組んでおり、まさに今の時代の要請に答えるものです。

医療現場からの広く、強い要請に答えられる高い専門性の獲得と複数の専門医取得の可能性

もちろん、質の高い医療の実践には、自分自身の専門領域を持ち、その領域では自分の右に出る者はいない、その病気になれば自分に主治医になってもらいたいぐらいだと言える高い技術力を持つことが要求されます。腎臓内分泌代謝内科では、腎生検、血液浄化/血液透析・腹膜透析法、シャント作成、閉塞解除、腹膜カテーテル挿入、管理、腎移植後フォロー、一型・妊娠時糖尿病などの管理、人工膵臓管理、持続糖モニタリング、インスリンポンプ管理、甲状腺細胞診、副腎静脈サンプリングなど極めて高い専門性を要求し侵襲性も高い医療行為を多彩に体得することができます。

昨今、専門医制度の改定が注目されていますが、新制度下においても、我々の科での活動は、複数の専門医を取得することを十分に可能にします。複数の専門医を有する医師は、臨床の場で大変貴重であり、皆さんは重宝がられ、歓迎されることは間違いありません。

“覚悟”をもてば“親身”は伝わる
――「ネガテイブ・ケイパビリテイー」

我々の科のモットーは、

  1. 患者さんの体に起こっていることをすべて把握する
  2. 生涯にわたって患者さんに寄り添い付き合う

ということです。

そのために大切にしている言葉は、“親身”になる、ということです。自分がその患者さんであったらどうしてほしいか、その患者さんが自分の親であったらどうしてあげたいか、という目線を常に持つことです。

そのためには、まず、意外に思えるかもしれませんが、広範な知識を持つことが大切です。病気に対する知識がなければ、自分の医療に自信が持てなくなり、いくら患者さんに対して誠実であろうとしても、つい他人任せ、あるいは見て見ぬふりをしてしまいます。気持ちだけでは、親身になれません。

次に大切なことは、時には「もう少し様子を見ましょうか?」といえることです。これは簡単なようで実はなかなか勇気がいることです。問題はそんなに単純でないことが多く、とりあえずいいか、何かしておこうとするのは、ある意味、逃げです。そのとき、いくら考えてもわからない場合、それを素直に認めて、しかし、その問題を投げやってしまわずに、心に刻み込んで、患者さんとともにずっと耐え続ける姿勢が大切です。これは大変なことです。つらいことです。患者さんと一生つきあう覚悟がないとできません。この力は、「ネガテイブ・ケイバビリテー(答えの出ない事態に耐える力)」と呼ばれています。我々は、この精神をもって、患者さんのライフロングケアーを目指しています。