内分泌疾患は全身臓器におよぶ幅広い疾患群ですが、当科では多くの患者さんが安心して診療を受けられるよう、以下のように他科連携を強化することでオールラウンドな内分泌診療を提供しています。各疾患の詳細につきましては、慶應義塾大学病院の医療・健康情報サイト「KOMPAS」でも解説しています。併記リンクも合わせてご利用下さい。
視床下部下垂体疾患
先端巨大症・Cushing病・プロラクチノーマなどの下垂体ホルモン過剰産生疾患、成長ホルモン分泌不全症・ACTH単独欠損症・中枢性尿崩症、下垂体腫瘍・ラトケ嚢胞・頭蓋咽頭腫などの腫瘍性疾患およびそれらによる下垂体機能低下症など、多岐に渡る視床下部下垂体疾患の診療を行っています。また、下垂体病変に対する手術を担当する脳神経外科と定期的な内分泌内科・脳外科合同カンファレンスを開催し、内科外科の両視点から適切な診療に努めています。
下垂体疾患の多くは難病医療費助成制度の対象となっており、患者さんが安心して医療を受けられるよう、当院での入院検査を通して難病申請も可能です。
甲状腺疾患、副甲状腺・骨代謝疾患
有病率の高い橋本病・バセドウ病の診療のみならず、亜急性甲状腺炎・機能性甲状腺結節・妊娠出産や不妊症に合併する甲状腺機能異常など、多様な甲状腺疾患に対応しています。健康診断・人間ドックで発見されることの多い甲状腺腫瘍に対しては、当科で甲状腺穿刺吸引細胞診が可能です。近年は癌に対する免疫チェックポイント阻害薬や他の抗癌剤、抗不整脈薬などによる様々な薬剤誘発性甲状腺機能異常も見られますが、原病の診療科と連携して診療しています。
副甲状腺および骨代謝疾患としても、原発性副甲状腺機能亢進症に始まり、先天性または頚部術後の副甲状腺機能低下症、骨粗鬆症、ビタミンD欠乏症、カルシウム・リン代謝異常など幅広く対応しています。
甲状腺・副甲状腺疾患に対する手術には耳鼻咽喉科・頭頸部外科と、バセドウ眼症に対する治療には眼科との密な連携が必須となりますが、当院では頭蓋底センターとして診療科間の連携を強化していることが大きな特徴です。また、近年は骨代謝異常に対する様々な薬剤が開発されており、整形外科との連携強化も図っています。
副腎疾患
副腎ではアルドステロン、コルチゾール、カテコラミンなどの生命維持に必要な様々なホルモンが合成・分泌されますが、その分泌過剰症・低下症はいずれも重要な疾患です。
アルドステロン過剰をきたす原発性アルドステロン症は内分泌性高血圧症の主要因であり、通常の本態性高血圧症と比較して脳卒中・心筋梗塞・不整脈・腎障害のリスクが高いことが特徴です。早期の診断・治療が重要となりますが、現実には未診断の患者さんが多くいらっしゃいます。当科では入院での負荷試験を通して正確な診断を心掛け、放射線診断科の協力を得ながら精度の高い超選択的副腎静脈サンプリングを提供し、アルドステロン過剰産生の病変を精密に特定しています。さらに、正確な診断と患者さんの副腎機能温存・低侵襲性を目的に、当科・泌尿器科・放射線診断科の3科合同カンファレンスを定期的に行い、病変部のみを治療対象とする副腎部分切除術や新たに導入されたラジオ波焼灼術も治療選択肢としてご提案しています。
コルチゾール過剰産生をきたすクッシング症候群、カテコラミン過剰の褐色細胞腫に対しても、当院の充実したアイソトープ検査設備も用いて正確な診断を行い、安全な手術を行うべく周術期は泌尿器科と二人三脚で診療しています。また、褐色細胞腫とともにカテコラミン産生腫瘍であるパラガングリオーマは頭蓋内・頭頸部などにも生じますが、上述の頭蓋底センターとして脳外科・耳鼻科とも連携しながら適切に対応しています。
先天性・遺伝性内分泌疾患
内分泌疾患には先天性疾患として先天性副腎皮質過形成(21-水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症など)、ACTH不応症、アンドロゲン不応症、副腎低形成、特発性副甲状腺機能低下症など、遺伝性疾患として多発内分泌腫瘍症(MEN)、褐色細胞腫を発症しうるMEN2, VHL, NF1など、様々な疾患があります。先天性疾患の多くの患者さんは小児期に診断されますが、成人期に診断されることもあり、小児科・内科双方の役割が肝要です。当科では小児科と随時連携することで、小児期に診断された患者さんの成人後の当科移行や、成人期に発見された疾患の小児科での遺伝子検査を含めた診断などを適切に行えるよう努めています。また、遺伝性疾患については内科的診療に加えて、遺伝子診断・遺伝カウンセリングを含めた当院臨床遺伝学センターへの受診も併行して可能です。