急性腎障害とは?

腎臓は、不要な老廃物はろ過して尿として排泄する一方で、体に必要なものは捨てずに保つことで、体の水分量や組成を一定に保つ大切な働きをしています。例えば高血圧や糖尿病を治療せずに放っておくと、動脈硬化が進み、腎臓の血管もその影響を受けてしまい、数年から数十年かけて徐々に腎臓の機能が低下し、この状態を慢性腎臓病といいます。一方、様々なことが原因で数時間から1週間程度の短い期間に腎機能が悪くなることもあり、これを急性腎障害といいます。急性腎障害は重症化し、命にかかわることもありますが、適切な処置によって、腎機能が回復することも十分に期待されます。そのため、早期に診断、治療を行うことが大切です。

診断は?

腎臓の機能は血液検査でクレアチニンという物質の濃度を測定することで比較的簡単にわかります。クレアチニンが数日のうちに基準値以上に上昇した場合や、尿量が基準値以下に減少した場合に急性腎障害と診断されます。

症状は?

初期段階では症状が現れないこともありますが、血尿が出現したり、尿の泡立ちが目立つ場合もあります。障害が進行し、尿量が減少すると体内の水分が増え、足の浮腫や肺水腫などの症状が現れます。また、老廃物が蓄積すると倦怠感や食欲不振などが生じることもあります。症状が進行した際には、尿量の減少によって体内のミネラルバランスが崩れ、不整脈が生じることがあり、命に関わる場合もあります。

検査は?

血液検査でクレアチニンや電解質などを測定します。また、老廃物やミネラルバランスも評価します。尿検査で蛋白尿や尿潜血が出ていないか評価します。超音波やCTといった画像検査で腎臓や尿管、膀胱などに異常がないか確認します。

原因と治療は?

大きく、3つにわけることができます。下の①や②のように、腎臓自体の機能は正常でも、他の要因に邪魔されて腎臓が本来の力を発揮できなくなる場合も急性腎障害に含まれます。治療も、3つのパターンでそれぞれ異なります。腎機能の低下が進行している場合には透析治療が必要となることもあります。

  1. 腎前性
    腎臓に至る前の段階の異常、つまり腎臓に供給される血液(=尿の材料)の量が減ってしまい、尿がつくられなくなる状態で、主に外来患者さんに見られますが、入院患者さんにも起こることがあります。これは、体内の水分が減少することによって引き起こされます。例えば、脱水症や大量出血、または利尿薬の過剰摂取によって水分が不足することがあります。同様に、感染症や大規模な手術後、または降圧薬の過剰摂取によって血圧が低下した際に起きることもあります。治療には、飲水の励行や点滴、輸血などが行われ、体内の水分量や血圧を正常な状態に戻します。
  2. 腎後性
    腎臓で尿が生成された後に起こる異常、つまり尿管、膀胱、尿道の障害によって引き起こされます。尿管結石や前立腺肥大、膀胱癌などの疾患により尿の流れが阻害され、物理的に尿の排泄が妨げられます。この結果、腎臓も尿を生成しにくくなります。治療は、尿道バルーンや腎瘻カテーテルなどで尿の通り道を確保しつつ、原因となった病気の治療を行います。
  3. 腎性
    痛み止めや抗がん剤などの一部の薬や、糸球体腎炎などの腎疾患により、腎臓そのものが障害を受けた状態です。入院患者さんによく見られ、原因を特定するために、腎生検と呼ばれる検査で腎臓に直接針を刺し、組織を採取する場合があります。治療としては、腎臓に悪影響を及ぼす可能性のある薬物の中止や、腎生検の結果次第ではステロイドなどの免疫抑制剤を使用する場合があります。

当科でのアプローチ

当科では外来および入院患者に対する腎障害の診断と治療を行っています。特に入院中の重症患者や大手術後の患者に多く見られる急性腎機能障害に関しては、内科と外科が連携し、適切な対応を行っています。必要に応じて腎生検も安全に実施しています。