血液透析とは
腎臓の主な役割は、体内の余分な水分や老廃物を排出することですが、腎臓の機能が低下するとこれらの物質が体内に溜まってしまいます。腎臓の機能低下が進行するにつれて、さらに老廃物や過剰な水分が溜まってしまうため人体に様々な有害な影響を及ぼしてしまいます。例えば、肺に水が溜まってしまうこと(=肺水腫)により呼吸が苦しくなってしまったり、体内に毒素が溜まってしまうこと(=尿毒症)により食欲の低下や全身のだるさなどの症状が現れたりしてしまいます。こういった辛い症状を改善し、このような症状を起こさないようにするのが血液透析です。血液透析は、腎臓の機能の代わりとなり、人工腎臓とも呼ばれます。透析によって体内の老廃物や水分を効果的に除去することで、日常生活を健康的に送ることができます。
血液透析の導入基準
腎臓の機能が正常の15%未満となってしまった場合には次のような症状が出て、透析が必要となる可能性があります。
そのため腎代替療法の説明を受けた上で、透析へ向けた準備を始めている必要があります。「平成3年度厚生科学研究腎不全医療研究事業研究報告書による慢性維持透析療法の導入基準」や日本透析医学会による「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」を参照に、症状・腎機能・日常生活の障害度を総合的に判断して導入時期を検討します。
血液透析の原理
ダイアライザーと呼ばれる装置が腎臓の代わりとなります。ダイアライザーは無数の極小の穴が開いた膜(透析膜)を束ねたもので構成されています。血液と透析液をこの透析膜に対向方向に接触させることで、「拡散」による濃度勾配を利用した毒素の除去と、「限外ろ過」による圧力を利用した水分の除去を行います。
血液透析の方法
血液透析は、1分間に約200ミリリットルの血液をダイアライザー(透析器)に送り込むために、「バスキュラーアクセス」という血液へのアクセスルートが必要です。バスキュラーアクセスには、自己血管内シャント、人工血管内シャント、動脈表在化、長期留置カテーテルがあります。このバスキュラーアクセスを用いて、血液を抜く「脱血」ルートと血液を戻す「返血」ルートを確保して行われます。多くは自己血管内シャントと呼ばれるシャントの静脈に針を2本穿刺することで透析を行います。また、血液が固まらないように透析中は血液をサラサラにする薬を使用します。
実際の血液透析は週3回(月水金か火木土)、1回あたりの3時間-5時間行うのが一般的で、より長時間行われることもあります。定期的に血液検査や胸部X線写真を行うことで、適切な量の水分や老廃物が除去できているかを確認しながら、適正体重まで過剰な水分を除去します。
また、血液透析の他に、血液濾過透析という方法があります。これは透析装置の中で血液に大量の補充液を加えヘモダイアフィルターと呼ばれる特殊な透析膜を用いることで、より強い圧力をかけることが可能になり、β2ミクログロブリンに代表される分子の大きさが大きい毒素を除去する事が可能となります。また、血圧低下が起こりにくいため、血圧低下しやすい方やβ2ミクログロブリンが蓄積してしまっている方に行われることがあります。
血液透析の合併症
血液透析の合併症は、低血圧、出血、感染症、シャントトラブルなどがあります。これらの合併症は、透析中や透析後に発生することがあります。そのため、医療スタッフは患者さんの状態を定期的にモニタリングし、合併症の早期発見と適切な治療を行っています。また、透析導入初期には不均衡症候群と呼ばれる合併症に注意する必要があります。これは、これまで蓄積した老廃物が急激に除去されることで発症するもので、頭痛や吐き気などの症状を起こすことがあります。これを予防するためには、導入初期は効率を落として少しずつ老廃物の除去をする必要があります。