腎代替療法選択外来
わが国では毎年約4万人以上の腎不全患者さんが腎臓の代わりをする治療、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)を新たに必要としています。本外来は、これら3つの治療法を患者さん、ご家族がそれぞれの特徴(長所・短所)を理解され、患者さんの価値観や意向、生活スタイルに適した選択をサポートし、医療者と協働して治療法を選択することを目的とした外来です。
腎機能の指標のひとつに糸球体濾過率(eGFR)がありますが、eGFR8mL/min/1.73m 2 未満に腎代替療法を開始すると予後が不良になるといわれています。このため『腎代替療法選択ガイド2020』では透析開始前の保存期腎不全であるeGFR 30mL/min/1.73m 2 未満の段階からに腎代替療法に関する説明、情報提供を開始し、選択に備える準備期間を十分に確保しつつ、患者さん、ご家族と医療者が協働して患者さんにとって適した治療法を選択していく「共同意思決定(シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM))」が推奨されています。
腎代替療法選択を検討する時期は患者さん、ご家族にとって不安が大きく、大変つらい時期です。当外来は患者さんやご家族と医療者(医師、看護師)とともに1回約30分の面談を3回前後行い、協働して患者さんにとって最適な選択ができるようサポートしてまいります。患者さん、ご家族よりご自身の価値観や意向、生活スタイル等をうかがい、患者さんの病態を確認し腎代替療法の概要を説明いたします。各治療法の詳しい説明は、パンフレット、血液透析回路、穿刺針、腹膜透析カテーテル、透析液バック、バック交換器等、実際に使用する器具を用い、患者さん、ご家族にそれらを手にとって模擬体験を行いながら理解を深めていただき、ご自身に合った治療法を選択できるようサポートしてまいります。
患者さんご自身が認知症等で意思決定が困難である場合は、ご家族をはじめ精神リエゾン専門看護師、ソーシャルワーカーも含めた多職種カンファレンスを行い、ご本人にとって最善な選択ができるよう、スタッフでサポートしております。また、年2回の腎臓病教室も院内で開催し、腎臓病や腎代替療法の啓発活動をしております。
医療技術が発展するとともに、複数の治療選択肢より選択しなくてはならない事があり、腎代替療法選択もその1つです。自分にとって適している治療法を選択することは容易ではありません。当外来が腎不全患者さん、ご家族の治療法選択の一助となり、腎代替療法を選択した後に続く長い療養生活をより快適にするための出発点になればと思います。
いつでもお気軽に医師、スタッフにご相談ください。
参考
日本腎臓学会
腎代替療法選択ガイド2020
腎臓病SDM推進協会
慢性腎臓病患者とともにすすめるSDM実践テキスト : 患者参加型医療と共同意思決定. 東京, 医学書院, 2020, ISBN9784260043205.